一般病院内科外来におけるうつ病有病率と医師の認識率

<論文>
Multiple barriers against successful care provision for depressed patients in general internal medicine in a Japanese rural hospital: a cross-sectional study.
Ohtsuki T, Inagaki M, Oikawa Y, Saitoh A, Kurosawa M, Muramatsu K, Yamada M.
BMC Psychiatry. 2010 Apr 26;10:30.

<概要>
慢性身体疾患にうつ病が多く合併することが知られています。また、うつ病の身体症状(不眠、食欲低下、倦怠感など)のために、うつ病とは気づかずに内科等の診療科を受診する可能性が知られています。
しかし、近年のかかりつけ医機能を有する一般病院内科外来におけるうつ病有病率に関する情報は限られていました。また、内科外来において、どのぐらいのうつ病患者がうつ病と気づかれ、治療に導入されているかについての情報はありませんでした。
そこで、地方郡部に位置する精神科の設置されていない一般病院内科外来において
•うつ病の有病率
•大うつ病患者に対する内科外来医師の精神障害の認識の有無と、精神障害有りと判断した場合の内科外来医師の精神科診断の内容
•内科外来における大うつ病患者に対する向精神薬処方の有無と、処方有りの場合にはその内容
を調査しました。
312名の20歳以上の内科外来患者を連続的に調査した結果、以下の表1から表4のような結果となりました。

表1 うつ病有病率(n=312)

312名の外来患者の内、27名 (8.7%)が大うつ病という結果でした。時点有病率で11名に1人が大うつ病という結果です。

表2 内科医による大うつ病患者の精神科臨床診断

内科外来医師は27名の大うつ病患者の内21名(77.8%)には、何らかの精神障害があると判断しました。約8割のうつ病患者に気づいていることになります。しかし、その精神科診断の内容を見てみると、うつ病を含む気分障害と正確に判断したのはわずか1割で、半数以上 (51.9%)のうつ病患者は、単に不眠とのみ診断されていました。

表3 うつ病の重症度と内科医による精神障害重症度判断の乖離(n=309)

内科医は、うつ病の重症度を正確には判断しておらず、うつ病が中等症から重症の患者でも、医師はうつ病がないもしくは軽症と判断してしまう例もあることが分かりました。

表4 大うつ病患者および内科医が気分障害と診断した患者に対する向精神薬の処方率

内科外来では、27名の大うつ病患者の内、抗うつ薬が処方されていたのは1割以下 (7.4%)の患者のみで、6割近く (59.3%)の患者には抗不安薬または睡眠薬のみ処方されていました。これは、上記の表2で、不眠とのみ診断されていることを反映しています。更に、内科医師がうつ病を含む気分障害があると診断した患者 (15名)に限定して処方内容を検討しても、4割近くの患者に抗不安薬または睡眠薬のみ処方されており、抗うつ薬が処方されていた患者は26.7%という結果でした。

これらの結果から、内科外来ではうつ病はまれな疾患ではないことが分かります。内科医師は、うつ病患者の約8割に何らかの精神障害があると正しく認識していましたが、その診断名を見ると不眠とのみ診断している例が多くありました。これまで、内科等の身体科診療科はうつ病を発見し適切な治療に導入することをその役割として課されてきませんでした。しかし、内科場面でうつ病患者の約8割に何らかの精神障害があると正しく認識されていたことは、今後、内科等の身体科診療科を受診する患者のうつ病を正しく発見することができるかもしれないことを示しています。

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